奏法とルーツ

Roots

恩師紹介

エベルト先生

ウィーン音楽大学ピアノ室内楽科で5年間師事したエベルト先生は
ご自身も兄弟で「エベルトトリオ」というピアノトリオを組んで
アメリカなどを演奏旅行されていました。
バッハの奏法について特にお詳しく
今の私のバッハ奏法はエベルト先生なしでは考えられません。

学校の授業ではまず室内楽のパートナーを探して練習してからレッスンを受けることになっていましたから、そのパートナー選びが最初は大変でした。

クユムジャン先生

クユムジャン先生には当時プライベートでレッスンを受けていました。今でこそウィーン国立音大の教授をしておられますが、当時はちょうどロンドンのケゼラジェ(ポゴレリッチ夫人)のところから帰って来られたばかりで、そのロシアピアニズムの真髄を教えて頂けたのかなと思います。

とても厳しいレッスンで当時は私も指の用意ができていなくて理解するのが難しかったのですが指ができてくると腑に落ちることばかりで、当時のレッスンを詳細にメモしたノートは私の宝物といってもよいほどです。

ソアレス先生

奏法とルーツ

[2015.9.1]

自分の奏法について語るのは誰にとっても難しいことと思います。
なぜなら習ったのは過去の一瞬ですが私は現在進行形で変わっていくから。
それでも敢えて語るならば、音楽の作り方やそれに向かう精神のあり方などはエベルト先生から学んだことが今も私の中に根を生やして生き続けていると言えます。
音楽を愛して謙虚に学び続ける姿勢、学校以外のレッスンでは決してレッスン料を取ろうとされなかった頑固さ、私のことを愛して可愛がってくださった方でした。

またテクニック(テクニックとは自分の望む音やフレーズ、ひいては作りたい音楽を作れるための指や手や腕、身体の使い方とそのトレーニング法のことと思っていますが)は実に多くの先生からそれぞれ多岐にわたる教えを受けました。

トニーからは指先をアクティブにする技術、それを指全部に応用するのはソアレス先生から、また手の中の筋肉の鍛え方はクユムジャン先生から。
私は決して恵まれた手ではないのでその手を強化し維持するためにいろいろな知識が(身体で覚えた知識が)必要でした。
今ではそのおかげでよい手のコンディションを維持できていると思っています。

でもその手を使ってどういう音楽を作っていくのかはその人の人生だと思います。
教わったことは私の中で私の感情をもって変化を遂げ、どんどん変わっていくのでどこまでが教わったことでどこが自分のオリジナルなのか区別できません。
また色々な本からも刺激を受けました。

ネイガウスの「ピアノ演奏芸術」はクユムジャン先生がネイガウスの息子スタニスラフに師事したこともあり特に大事にしている本ですし、「シュナーベルピアノ奏法と解釈」も愛読しました。

私のレパートリーはモーツァルト・ショパン・シューマン・グリーク・ドビュッシー辺りで、スクリャービンは好きですが手の大きさに限界があるように思い、まだ挑戦できていません。